ぶらついた結果

あちこちぶらついた結果を記録していきます。週末は主に奥多摩歩き。

【輪読】マイナー・サブシステンスの特性と社会的意味

マイナーサブシステンス関連の論文を見つけてはKindleFireに入れて通勤中に読んでいます。 今回は下記の論文を読んだので簡単にまとめておきます。

川田 美紀「マイナー・サブシステンスの特性と社会的意味 沖縄県国頭郡今帰仁村古宇利地区を事例として」

抄録

上記論文では沖縄県の古宇利島で行われているマイナーサブシステンスを「生活圏から近い/遠い」「資源の採取が確実/不確実」という2軸で分類し、かつ古宇利島におけるマイナーサブシステンスの社会的意義について考察している。

生活圏に近接したマイナーサブシステンスとしてはアーサと呼ばれる海藻の採取があり、これは比較的手に入りやすい。またシラヒゲウニの採取も生活圏に近い空間で行われるがこれは個体数の減少により現在では採取が難しくなっている。 川田が調査を開始した2008年ごろにはすでに主要な生業として成り立っていた。安陪麻子によると、これには取引業者の出現によってマイナーサブシステンスであった生業が主要な生業に変わったとのこと。

生活圏から遠く、採取が不確実な生業としてタコ漁があげられる。タコ漁には高度な道具は必要なくモリさえあれば誰でも始められるが、その分熟練した技能が要求され、タコ漁がうまい人物は「タコ取り名人」と言われ島民からの尊敬を集める。

マイナーサブシステンスの社会的意義として * 共有財産としての資源 * 資源を生み出す自然への畏敬 という二つの側面が存在する。

古宇利島では資源は「ユイムン(寄 り物)」と認識されている。「ユイムン」は,その資源に遭遇した人の意思(捕獲したいかどうか)にかかわらず,享受するのが礼儀と考えられてきた。また,その恵みは個人や一部の人たちで独占するのではなく,島の人びとに積極的に共有されるべきだと考えられていた。

採取活動や資源を共有することで,地域の人びとは自然が地域のみんなのものであるという意識を抱きやすくなり,自然とかかわる経験は人びとが自然を身近に感じ,自然環境に対する関心を維持することに寄与している。

感想

中間取引業者の出現によりマイナーサブシステンスが主要産業に変貌する可能性がある、という視点は持っていなかったので興味深く思った。産業の歴史的な生成過程を検証していくと、元々はマイナーサブシステンス的な生業であった事例も見つかるかもしれない。これで一つの研究テーマになり得そう。

また、資源とその獲得過程が共有されることで、資源を提供する自然への維持する規範が生まれるというのはまさにマイナーサブシステンスが環境保全の観点で注目される点であり、こういった事例について引き続き調査していきたい。